歴史的建築物の外壁保存と調和を実現した集合住宅
大正7年、辰野金吾氏の設計により大阪農工銀行ビルとして竣工し、昭和5年、道路拡幅に合わせて、國枝博氏により改修され、現在の外壁デザインとなった歴史を持つ建築物に、現代的な用途・形態を融合した集合住宅。 既存建築物の保存と、これに相対する事業性や現行法規、集合住宅の機能性との両立 を実現できる設計を追求した。 外壁保存に関しては、デザインと装飾材・躯体まで現状のまま保存できる「曳家工法」を採用。保存駆体内側に新築構造駆体を形成し、保存駆体と接合させる構造としている。装飾材・保存躯体には試験結果に応じ補強を施し、保存外壁に表出する構造スリットや接合による補修部は、色や素材を現地で繰り返し確認、調整をおこなった。 集合住宅の機能上必須となる室外機置場や開口等の外観要素が自然にまとまる意匠を模索し、新築部と保存部とがそれぞれ共存しつつ調和する意匠を目指した。また、共用部に関しては、既存建築物にあった内装材を一部保存再利用しており、新旧の素材や機能が調和した空間をコンセプトとしてデザインしている。