“個”の交わりが創発する“群”の多様性
本物件は若手社員が利用する社員寮の計画である。
計画地の存する日本橋横山町地域は江戸時代以来途切れることなく続く、小間物を中心とした問屋街地区として栄えてきた。同時に、人のつながりを大事にしながら多様性をはぐくみ、伝統と革新を共存させてきた場である。
このような背景・要素に対して、ここで生活を行う社員に対して求められるものは、自らの立脚している社会や歴史、つながりを重んじながらも、個人としても成長し、独自性や新たなアイデアをいかんなく発揮するような人物像ではないかと考えた。
そのような若い社員同士がタテヨコナナメの関係のなかで交わりあい、切磋琢磨し、個の成長と多様性を醸成していく、そんな場であることを目指している。
上記の生活の場に呼応する外観デザインのコンセプトとして、「“個”の交わりが創発する“群”の多様性」とした。
外観デザインにおいては、「多様な個性がつながり、交わりあう」というイメージで、輪郭の太さ、形の異なるアルミパネル製フレームが集合し、ルーバーによってそれぞれのフレームがつながるデザインでファサードを形成した。これは、様々な紋の集合が群として特色ある図を創りだす、日本文化にもなじみの深い伝統文様からデザインの着想を得ている。
基壇部分については、歴史ある問屋街の街並みと呼応する、店舗や寮の共用施設からなる基壇部を大庇下に据え、その中に通り抜けのできる街にオープンな遊歩道を配置することで、地域とも繋がっていく社会性を有したにぎわいを創出した。
本計画が、ここに生活する社員たちにとって、新たな「つながり」を生み出していく一助になることを願う。