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#04 医療福祉設計

高松から始まり、全国展開。人に寄り添うIAOの医療福祉の歩みと未来

  • 大西 弘幸上席執行役員
    大阪第三事務所所長・
    名古屋事務所所長
  • 馬場 智史東京第二事務所所長代理
    設計部長
  • 田中 聡大阪第一事務所副部長
  • 原 雅彦IAO都市施設研究所
    理事
    プロジェクトマネージャー
  • 倉田 敦夫IAO都市施設研究所
    執行役員
    プロジェクトマネージャー

Question 高松を原点に大阪へと広がった IAOの福祉施設設計

大西 弘幸
大西 弘幸

創設者である竹田会長の地元・高松でのご縁からご依頼をいただいたことがきっかけで、1990年に特別養護老人ホーム香東園が竣工しました。そこから福祉施設の仕事が広がっていきます。大阪事務所としての本格的なスタートは、1992年竣工の特別養護老人ホーム サンホームみかづきです。以降、サンホームあまがさき等へと続き、大阪でも福祉施設の受注が増えていきました。

原 雅彦
原 雅彦

サンホームみかづきでは、設計だけでなく「社会福祉法人の設立も手伝ってほしい」と言われました。定款や法人会計まで学び、法人とは何かを理解したことは大きかったですね。この経験が、その後の新設法人支援にもつながり、当社の強みになったと思います。

  • 神戸海岸特養ケアセンター 基準階平面図
  • 特別養護老人ホーム サンホームみかづき
大西 弘幸
大西 弘幸

2002年、厚生労働省が全室個室ユニットケアの指針を示したことが、設計思想の大転換でした。それまでの4人部屋中心の施設型から、プライバシーに配慮した個室を基本とし、リビングを囲む小規模単位へ。2004年竣工の特別養護老人ホーム錦織荘の増築が当社初の全室個室ユニットケア案件です。以降、この考え方が主流になりました。

田中 聡
田中 聡

特養等の設計においては「住まい」として、光や風、回遊性、多様な居場所を実現するプランニングを重視しています。例えば神戸海岸特養ケアセンターでは、都心の容積率600%を超える高密度な施設でありながら雁行配置により全室2面採光を確保しました。また神戸市北区高齢者複合施設では、300床を超える大規模施設を中庭を囲んで分節配置し、ヒューマンスケールに落とし込みながらも、一体感が生まれるように計画しています。

大西 弘幸
大西 弘幸

ユニットケア以降、私たちが強く意識したのは「プライベート・セミパブリック・パブリック」の関係性です。高齢者の尊厳を守りながら、人と人が自然に関わる環境をかたちにしてきたことが、当社の福祉施設設計の原点であり、今につながる系譜だと考えています。

Question 医療施設設計への発展。高い専門性に応え続ける

大西 弘幸
大西 弘幸

IAOの医療施設への取り組みは、1999年竣工の南芦屋浜病院が大きな契機となりました。社会福祉法人との関係に加え医療法人とのご縁が広がり、病院設計の依頼へと発展しました。

田中 聡
田中 聡

その後、旧社会保険庁の福利厚生施設をコンバージョンした神戸マリナーズ厚生会病院や、レンガによる重厚なエクステリアデザインの芦屋セントマリア病院、コーポラティブハウス的手法で身近な総合病院のようなクリニックビルを目指した寝屋川大利(おおとし)メディカルガーデンズ等の印象的な作品がありました。病院は診療内容や病棟構成から動線が決まるため、限られた面積でいかに合理的にまとめるかが要です。各科の面積調整等、厳しい条件下での効率化やデザインでの差別化、細部の工夫こそ私たちの強みです。

  • 芦屋セントマリア病院
大西 弘幸
大西 弘幸

私は阪和インテリジェント医療センターを担当しました。PET-CTやMRIを備えた総合検診施設で、諸条件等が多い施設を、先生方はじめ多くの方に協力を得て創り上げることができました。こうした経験も財産なので次世代へ継承していきたいですね。

Question 公募やプロポーザルで確かな実績を重ねた東京福祉

原 雅彦
原 雅彦

大阪事務所は人的つながりが起点でしたが、東京事務所は公募やプロポーザルからのスタートでした。特に2010年代以降、国有地や都有地の活用が進み、公有地情報をいち早く収集し、法人へ提案する形で道を切り拓きました。補助金制度も東京は手厚く、地方法人にとって大きな後押しとなりました。

大西 弘幸
大西 弘幸

大阪事務所ほど実績がなかった時期は、ゼロからの立ち上げに近い状況の中、情報収集と法人へのアプローチ等を重ねてきました。そのような中、東京での福祉施設設計の本格的な始まりは2014年竣工の足立万葉苑です。大阪で経験を積んだ馬場さんが東京へ赴任し、初の特養を実現しました。これを契機に東京での福祉施設の設計依頼が広がっていきました。

馬場 智史
馬場 智史

足立万葉苑は都有地を活用したプロポーザル案件で、防災拠点機能など社会貢献性の高い提案が求められました。防災井戸やかまどベンチの設置等を盛り込み、デザインでは大胆な壁面緑化で「特養でここまで思い切った提案ができるのか」と話題になったエポックメイキングな作品です。この作品が評価され、その後の展開につながりました。続いて、団地再編と連動したケアホーム板橋とココロネ板橋では、桜並木を保存しながら防災広場や地域交流拠点を計画。障害者就労支援カフェも併設し、団地コミュニティの核となる複合施設を実現しました。景観賞も受賞し、東京での評価を確かなものにしました。

原 雅彦
原 雅彦

その後も区有地を活用した東池袋桑の実園や、練馬いやし園等へ展開しました。地方行政のニーズや法人の思いを設計力として積み上げてきました。

倉田 敦夫
倉田 敦夫

東京での成果は大阪にも刺激を与え、勉強会の開催など組織全体の底上げにもつながりました。こうして2014年以降、公有地活用とプロポーザルを軸に、東京事務所の福祉分野は着実に実績を重ねていきました。

チャームプレミア 鎌倉山

Question 東京・大阪両事務所で高齢者住宅の依頼が拡大

大西 弘幸
大西 弘幸

2010年頃から高齢者住宅の設計依頼が増え始め、ここ10年ほどはサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や有料老人ホームが大きな柱になっています。背景には、デベロッパーの参入やコロナ禍によるホテル建設からの事業転換もありました。私たちはもともと集合住宅と福祉施設の両方を手掛けてきた。その強みが評価され、案件が拡大しました。実際、『日経アーキテクチュア』の売上ランキングでも福祉分野で上位に入り、2019年と2023年には最高2位を獲得しています。東京では特に高級有料老人ホームの依頼が増えました。

馬場 智史
馬場 智史

象徴的なのがチャームプレミア鎌倉山です。鎌倉山の高級住宅地に建つ低層・横長の建築で、勾配屋根の陰影が際立つ佇まいを重視しました。この実績が評価され、各社のハイエンドブランドへと広がりました。また、グランフォレスト田園調布ではホテルライクな設えと多摩川の自然を生かしたランドスケープを追求し、2024年度グッドデザイン賞を受賞。アズハイム神宮の杜では都心立地で容積を最大限に活用しつつ、盆栽やアートを取り入れ、場所性と入居者ニーズを融合させました。現在は港区西麻布でも超高級案件が進行中です。

大西 弘幸
大西 弘幸

一方、大阪では複合用途を含め幅広い分野の依頼を受けています。

倉田 敦夫
倉田 敦夫

2011年の高齢者すまい法の改正直後からサ高住に関わり、補助金申請も含め提案力を磨きました。初期の案件を通じて運営会社との信頼関係を築き、その後の展開につながりました。例えば、国土交通省のスマートウェルネス住宅等推進事業であるサンサーラ・レジデンスは、コンサルタントとしても携わり、4年のケーススタディーを重ねました。自立期から入居し、要介護期は隣接する特養へと移ることのできるCCRCをコンセプトにしたサ高住であり、カフェや交流スペースを併設し、地域に開いた拠点としました。また、寿里苑翡翠は社会福祉法人による住宅型有料老人ホームで、がん末期など重度者に対応するホスピス機能を備えました。介護保険制度が厳しさを増す中、新たな事業モデルとして挑戦した案件です。

田中 聡
田中 聡

加えて、アクティブシニア向けの分譲型もあります。レストランや大浴場を備えた、有料老人ホームと一般の分譲マンションの中間のような住宅で、元気なうちから豊かに暮らす住まいを提案しています。

大西 弘幸
大西 弘幸

こうして振り返ると、私たちは「福祉」と「住宅」の両輪を持っていたからこそ、高級化にも複合化にも対応できた。高齢者住宅は今後も多様化しますが、その変化に応え続ける設計力こそが強みだと思います。

Question IAOの医療福祉設計の強さを全国で示していきたい

大西 弘幸
大西 弘幸

今後の展開としてまず挙げたいのは、全国展開です。2023年に名古屋事務所で竣工したアリア八雲・山手通、そして2024年には九州事務所でメディカル・リハビリホーム グランダ水前寺が完成しました。高松から始まり、これで全事務所で実績が揃いました。各拠点の力も着実に伸びていますので、「IAOは福祉に強い」と全国で示していきたいと思っています。最近は、高級かつアクティブ志向の住まいが一つの流れです。アリア八雲・山手通では、エントランス上部3層をすべて共用部とし、アクティブゾーンや食堂を大胆に配置しました。単なる高級感ではなく、元気なうちから楽しめる空間づくりが重要だと感じています。もう一つの柱が、環境配慮とコミュニティ形成です。既存樹の保存や緑化にはこれまでも取り組んできましたが、グランフォレスト田園調布やアリア八雲・山手通ではABINC認証を取得する等、生物多様性にも踏み込みました。特に印象深いのはチャームプレミア浜田山です。敷地中央の欅(けやき)を残すため、建物で取り囲む計画に挑戦しました。

馬場 智史
馬場 智史

工事中は木を枯らさないよう、水やり専門のスタッフを置いたほどです。地下工事をしながら真夏を越えるのは大変でしたが、完成後は皆さんに喜んでいただけました。

  • 特別養護老人ホーム 足立万葉苑
  • 介護老人福祉施設ケアホーム板橋
  • サポートハウスココロネ板橋
大西 弘幸
大西 弘幸

環境との調和は付加価値になると実感しました。今後はナーシングホーム豊泉家(ほうせんか) 芦屋山手のような木造や、複合施設のPatona吹田健都のように住宅や福祉、保育等を組み合わせ、多世代コミュニティが緩やかにつながる場づくりも積極的に担いたい。

倉田 敦夫
倉田 敦夫

これからは「元気な高齢者」が主役です。住み替えニーズに応えるアクティブシニア向けレジデンスは、私たちの住宅設計の強みを生かせる分野だと思います。

Question 「福祉」と「住宅」の強みを生かし人に優しい建物をつくり続けたい

田中 聡
田中 聡

分譲マンションで磨いてきた効率的な設計は医療福祉にも通じるものです。物価高騰で病院や特養単体では成立が難しい時代に、マンション等との複合化で全体最適を図る提案ができる。我々は分譲マンションも得意な総合事務所として、効率的に全体を計画できて、双方が成り立つ着地点を模索することができます。

原 雅彦
原 雅彦

特養の新築が厳しい中、行政と連携し、定期借地権を活用しながら住宅や有料老人ホームと組み合わせる複合型プロジェクトは増えていくでしょう。そうしたスキームを描けるのは、住宅と福祉の両方を理解している我々の強みです。なんとしてもオピニオンリーダーになっていきたいですね。

馬場 智史
馬場 智史

福祉施設のノウハウがあるだけではなくて、1件1件を作品として残していこうとするマインドが当社の強みだと感じています。これからも皆で大事にしていきたいです。

  • サンサーラ・レジデンス(増築)
  • patona吹田健都
倉田 敦夫
倉田 敦夫

シニア住宅市場が魅力的なマーケットとしてある今、今後も多数のデベロッパー進出が予想されます。私たちとしては非常にいいポジションで迎え撃つことができるんじゃないかと思います。

大西 弘幸
大西 弘幸

かつて高齢者施設は「施設」でした。しかしユニットケアの広がりとともに「住まい」へと変わった。その時代に、私たちは「住まいとしての高齢者住宅」を描いてきました。「IAOの図面は生活の雰囲気がある」と言われたことは象徴的です。今後新しい知見や技術を取り入れ、人に優しい設計を行うことで、そこに住まう方、働かれる方、訪れる方、皆さんが心地よく笑顔でいられるような建物を皆でつくり続けていきたいと考えています。

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